ここ数年でギフテッドや2Eという言葉を聞く機会が、増えてきました。
テレビやアベマプライムのようなYoutube番組で特集されたり、書籍も出版されるようになりました。
かつては突出している能力だけがクローズアップされて、遠いイメージだった『ギフテッド』です。
でも最近は、
- 突出した才能とは裏腹に欠点があって生活に支障が出ている。
- 欠点ばかりに目を向けられる環境にいるために、才能を発揮できない。
支援が必要な存在として、報道されるようになりました。
これらに当てはまる子が、
ケースがとても多いです。
授業に興味が持てずに先生の指示に従えない子供は、問題児として扱われます。
一斉授業が合わないために、たくさんのギフテッドにあたる子が能力を生かせないまま一生を終えているとしたら?
社会にとっての大きな損失です。
学校で浮いてしまってつらい思いをしているお子さんをお持ちの方。
お子さんは、このギフテッドに当てはまるかもしれません。
そんな風に考えることで、親御さんがもっと前向きに楽しく過ごせるのではないかと、この記事を書きました。
ギフテットの今までのイメージ
映画の『gifted/ギフテッド』は、2017年に制作された映画です
日本でも公開されたので、ご覧になった方もいるのではないでしょうか。
この映画の主人公でギフテットの少女、メアリー。
わずか7歳で大人でも難しい計算を暗算で解いてしまう数学の天才児です。
自殺してしまった母親は、著名な数学者と言う設定。
メアリーは、大学で習うような数学の公式も解いてしまいます。
この「メアリーの教育をどうするか?」がテーマです。
このように数学ができる人は、以前からギフテットとして紹介されていました。
日本では、算数オリンピックで金賞を何度も受賞している、プログラミングの才能があるなど、
得意な才能が認められて孫正義育英財団に所属している子が分かりやすい例です。
また『ザ・ギフティッド 14歳でカナダのトップ大学に合格した天才児の勉強法』の大川翔さんが有名です。
翔さんは、両親の仕事の関係で5歳の時にカナダに転居し、9歳でカナダ政府から
「ギフテッド=天才児登録」された人。
12歳で日本の名門私立中学校、渋谷幕張中学(帰国生枠)に合格したものの、
悩んだ末にカナダに戻ってギフテッド教育を受けています。
14歳で高校を卒業し、カナダのトップ大学5校(理系)に合格。
しかもピアノや空手も得意という、まさにオールマイティ。
これが、今までのギフテッドと呼ばれる子どものイメージでした。
クラスに1,2人の割合でいるギフテット
このような誰もが認める、明らかに突出した才能を持つ子どもだけでなく、今話題になっているギフテッドは、もっと身近な子ども達も含まれています。
例として、アメリカのギフテッドには5段階あり、次のような基準になっているそうです。
- レベル1:IQトップ10%(120–129)
- 一般的な「頭の良い人のイメージ」の多くはレベル1
- 1歳以前に本に興味を持つ
- 4歳以前に足し算・引き算をマスター
- 7歳以前に自分の年より2-3年上様の本を楽しむ
- レベル2:トップ5%(130–135)
- 5ヵ月~9ヵ月の間に本に興味を持つ
- 2歳までに「5」かそれ以上まで数えられる
- 4歳までにある程度幼児用の本を部分的に読める様になる
- 4歳までに小学1年生入学に必要なスキルをマスター
- レベル3:トップ2% (136–140)
- 本のページを一人で10ヵ月までにめくる
- 幼稚園入学以前に教えられなくとも本を読み始める
- 6歳までに自分の年の2-3年以上のレベルの本を読める
- 迷路やパズルに強い興味を4歳以前に持ち始める
- レベル4:トップ0.5% (141+)
- 3-4ヵ月までに本に強い興味を持つ
- 「あいうえお」を全て2歳以前に覚える
- 4歳~5歳までに8歳程度の子供の知能・知識を得る
- 本を5歳までに「情報を得る」目的で読み始める
- 3年生か4年生ごろには中学生の学力
- レベル5:25万人に一人(IQ140+)
- 数、文字、色、形等は全て喋り始める前に理解する。
- 15ヵ月までに文法にあった喋り方を始める
- 幼稚園レベルの知識とスキルを2歳までに獲得
- 4歳か5歳までには中学生レベルの数学の知識を理解し、哲学的な疑問や論理に興味を持ち始める
- 普通の学校課程とは合わない
Quoraから引用しました。
レベル2~5、 IQ130以上の子供がギフテット教育を受けるターゲットとのこと。
100人中5人の割合で、ギフテットが存在していることになります。
クラスに1人はいる計算になりますね。
WISC検査のIQが130以上でなくてもギフテットの可能性がある
上越教育大学の角谷詩織先生の論文『知能検査とギフティッドの判定』によると、
IQ130以上の子はギフテット。
更にそこから取りこぼされてしまうギフティッドがいるそうです。
WISC検査はIQ130以上が上位2%になるように作られています。
上の表のIQ130-135は5%になっているので、WISC検査のIQとは違うのかもしれません。
もっと広く柔軟に選別していることが考えられます。
その他、IQ値によって表のように呼ばれています。
種類 | IQ |
---|---|
マイルドリーギフテッド | 115 – 129 |
モデレートリーギフテッド | 130 – 144 |
ハイリーギフテッド | 145 – 159 |
エクセプショナリーギフテッド | 160 – 179 |
プロファウンドリーギフテッド | 180+ |
マスコミで今まで取り上げられていたのは、ハイリー以上のギフテッドだったのでしょう。
また知能の高さだけでなく、リーダーシップ、芸術性、運動能力のいずれかで、突出した才能を持つ人もギフテッドに値すると言われています。
『ピュア』という和久井映見さん主演のドラマを思い出しました。
和久井映見さんが演じる主人公は、軽度の知的障害を持ちながら、芸術の才能、特にオブジェ作りに関して天性の才能を持っているという話。
初々しくて純粋で、可愛かったです。
この主人公もギフテッドにあたると思います。
主題歌は、ミスチルの「名もなき詩」。大ヒット曲となりました。
話はそれますが名曲ですよね。
思い出すとこの曲が、頭の中でずっと流れ続けます。
ギフテットと発達障害との違い
知識欲が旺盛で、興味ある事を極めたいと常に思っているのがギフテットですが、
「ギフテットは発達障害と誤診されがちである」と言われています。
ギフテット研究所理事長で、世田谷区『どんぐり発達クリニック』の宮尾益知院長によるこの記事には
・授業中ぼんやりしている(内容が簡単すぎる)
・課題を最後まで終えることができない(わかる問題を繰り返し解くことに抵抗がある)
・先生の指示に対して反抗する(言動に矛盾を感じるため)
・同学年で友人関係を築きづらい(知的水準の合う相手がいないため)もし、こんな子どもの姿が見られた場合は、発達障害ではなくギフテッドかもしれません。
https://www.shinga-farm.com/parenting/gifted-education/#06
とあります。
わが子たちのWISC検査については、以下の記事で書いています。
WISC(ウィスク)検査の結果でわかった学校嫌い、合わない理由
娘は全検査IQが130以上あります。
けれども医師の診断は、発達障害(ADHD不注意優勢型+ASD)です。
誤診でしょうか?
研究者の間でも判断が分かれていて、今のところ明確な基準はありません。
私は2E(twice-exceptional)と考えるようにしています。
2E(twice-exceptional)とは
突出した才能を持ちながら、学習障害、ADHD、ASDなど発達障害の特徴がある人
知的に高いというまれさ+発達障害というまれさ
をダブルで持つ人は「二重に特別」という意味で「2E(twice-exceptional)」と呼ばれます。
彼らが生きる張り合いを感じるために、
ことがとても重要です。
一方で、
と苦手なことも少しずつできるように促す。
消して強制&矯正しようとしない。
このさじ加減が、本当に難しいです
わが子がギフテットと思うことで救われる
結局のところ、ギフテッド、2E、発達障害、どれに当てはまるかは重要ではありません。
そもそもグループ分けしようとするのが、間違っているのかもしれません。
必要なのはその子に合った支援をすること。
鬱になりADHD不注意優勢型+ASDと診断された娘です。
平均的な子に合わせる一斉指導を緩和してもらうためには、診断は必要でした。
でも診断があることで発達障害に対する偏見から、大人が間違った対応をしてしまうことにも繋がります。
「ASDは慣れないことをするのが苦手。学校行事は大変。」
と臨床心理士の資格を持つカウンセラーが言いますが、娘は真逆です。
新しいことが体験できるので、学校行事は積極的に参加します。
むしろ単調な普段の学校生活が苦痛。
診断が下りてから、ストラテラやコンサータ、エビリファイ等の投薬治療をしました。
しかし効き目が感じられませんでした。
投薬のせいで好奇心旺盛だった娘らしさを失ったようにさえ感じます。
「一体どうしたら?」といろいろな文献をあさりました。
そこでついに見つけたのが北海道大学、小泉雅彦先生のこの論文です。
認知機能にアンバランスを抱えるこどもの「生きづらさ」と教育 : WISC-Ⅳで高い一般知的能力指標を示す知的ギフティッド群
ほんの一部の図を引用しましたが、
書いてある困りごとが、ほとんど当てはまるのです。
こちらに書いてある通り娘は、二次障害と不登校になりました。
そう言うことだったのか!
と原因が明確に。
そして、ついに!
北海道教育大学の片桐正敏(かたぎり・まさとし)先生他、
小泉雅彦 先生、日高茂暢先生、 富永大悟さん 、ギフテッド応援隊による、支援の方法を書いた本
『ギフテットの個性を知り伸ばす方法』が出版されました。
先に引用した論文は難しい内容でしたが、この本はとてもわかりやすいです。
イラストや漫画を交えながら、
が誰にでもわかるように書かれています。
上の図の内容がもっと整理されて出てきます。
近くに分かってくれる人がいなくて、孤独な育児をしている方はぜひ読んでみてください。
実在のギフテッド達をモデルにマンガで書かれた
片桐正敏(かたぎり・まさとし)先生、小泉雅彦 先生が監修のこちらの本。
周囲の人に理解して欲しいときに、気軽に読んでもらえそうです。
同調圧力が強い日本で知的な遅れのない発達障害、2E、ギフテット児を育てるのは、経済的にも精神的にも、とても辛い時があります。
大変な子を授かってしまったけれど、
適切な教育をすれば、社会に貢献する人材になる。
社会に必要とされれば、自分の存在意義を感じられて幸せになれる。
この大変な子ども達を育てるのが、親としての使命だ!
とでも思わないと、とてもやっていけません。
学校との付き合い方は難しい
等、「こざかしい嫌味な奴」と受け取られることがある反面、
等、だらしがない部分がどうしても目立ってしまいます。
学校では先生からも、クラスメイトからもつらく当たられがち
日本の学校で自己肯定感を保ち続けるのは難しいのです。
ホームスクーリングという選択もありますが、私のような凡人は子どもの好奇心を満たすには役不足です。
ギフテットは遺伝的要素が強く、親御さんのどちらか、または両方がギフテットの可能性があります。
我が家は多分、夫がそれにあたります。
でも、子どもに何か教える気は全くありません(´;ω;`)ウッ…
特殊な子ども達のワンオペ育児、辛すぎます
最後に、前出の宮尾益知先生のこんな言葉をご紹介しておきます。
いくら小学校でIQが130あっても、それを活かせる環境(中学受験をするなど)に行かないと日本にいる限りは意味をなしません。
不登校でひきこもっていたら、せっかくの高い能力もダメにしてしまいますし、IQはどんどん低下していきます。
https://www.shinga-farm.com/parenting/gifted-education/#06
宮尾先生は「中学受験」を勧められていますが、
「地元の学校に所属しながら、N中等部に通う」など、ほかの選択肢も増えてきました。
合わない環境に固執せず、知的好奇心を満たせるような経験をさせてあげたいですね。
ギフテッド研究の一人者、角谷詩織先生の新書
『ギフティッド その誤診と重複診断: 心理・医療・教育の現場から』北大路書房(2019)
『わが子がギフティッドかもしれないと思ったら: 問題解決と飛躍のための実践的ガイド』 春秋社 (2019)
の訳者で知られる、角谷詩織先生の新書です。
角谷先生がご自身の言葉で書かれたギフテッド本は初めて。
ギフテッドに対してとてもやさしいまなざしを向けて下さっていて、心救われる一冊です。